一転、割増賃金支払いへ 市職員の振休不適切運用問題 監査委員4年前に指摘

2020.02.10
丹波篠山市地域

丹波篠山市役所=兵庫県丹波篠山市北新町で

兵庫県丹波篠山市職員の振替休日(以下、振休)の不適切な運用が常態化していた問題で、同市は過去2年間の勤務実態を調査し、規定期間を超えて振休を取得できていない職員に対し、割増賃金を支払う方向で検討していることが分かった。また、同市の監査委員が4年前の定期監査で問題に気づき、是正を求める指摘を行っていたことも判明。市総務課は、「今後は労使ともに制度をしっかり理解し、より適正な運用に努めていく」とした。

 振休は、あらかじめ休日だった日(時間)を「労働日」に切り替え、ほかの労働日を休日にするもの。このため日曜日に働いたとしても、「休日労働」にはならず、割増賃金は発生しない。
 一方、よく似た制度として代休があるが、こちらは突発的に休日に働くことになり、代わりに以降の労働日の中で休みを取る。もともと休日だった日に働いているため休日労働となり、割増賃金が支払われることになる。
 ただし、労働基準法では、振休であっても働いた日の週のうちに休日が取得できない場合、法定労働時間を超える勤務があったことになるため、週をまたがる振休は割増賃金の対象となる。
 通常、規定労働時間(週38時間45分)を超える勤務がある場合、▽残業手当を付ける▽振休をとる―の二択になる。
 問題となっているのは、同市の振休は、「市などが主催する大会、行事、試験、研修及び講習会など」と規定しているにもかかわらず、「ノー残業デー」に残業する場合や通常業務での残業などにも適用していたこと。
 また、振休は同一週内の取得が原則だが、現実的には難しいため、労使協定で「4週以内に取得」と規定。法律を厳格に適用すれば、振休の取得が同一週を超えた場合には割増賃金が必要になるが、市はこれまで、「労使間で合意を得ている」として支払ってこなかった。
 ただ、職員組合との協定書には「4週以内の取得」とあるだけで、「割増賃金の放棄」はうたわれておらず、組合はこれまでにも労使交渉で割増賃金の支払いを求めてきた。
 職員側も振休を「いつでも取れる休日」ととらえていたケースもみられた。
 市は昨夏、管理職に対して適正な時間外勤務や振休の管理について研修を実施。ノー残業デーの残業を振り替えることはやめ、そもそも残業をさせないことや、やむを得ない場合は時間外手当を付けることなどを確認している。
 振休問題をめぐっては、昨年、市議会一般質問などで議員が指摘。その際、市は、「本人の都合で規定期間を超えて休むこともあり、割増賃金は『放棄』したととらえることもできる」という認識を示していた。
 ところが、この問題が報道されると方針を転換。市総務課によると、現在は割増賃金を支給する方向で検討を進めており、各部署で勤務実態を調査しているという。また、全職員に対し、「同一週内での取得」を求める通達を出した。
 同課は、「改めて労使間の協定書を見直した際、協定で定めた内容にないもの(振休取得が4週を超えた場合の対応)があり、割り増し分の支払い義務があると認識した。早急に是正する」と説明。「今後は労使の信頼関係を構築し、よりモチベーションが高められる職場づくりに努めていきたい」とした。
 一方、市監査委員は今年度、4年に一度の定期監査で、振休について▽条例、規則、要領の通りに実施されていない▽正規の時間外勤務を振休にしている▽ノー残業デーの時間外を振休で対応している▽時間外勤務を予算不足に伴い、振休、またはサービス残業にしている―などと指摘。割増賃金の支払いも含め、適正な執行を行うよう求めた。
 畑利清監査委員は、「4年前にも指導しているにもかかわらず、調査や適切な処理がされていないことは大変残念」とし、「市民サービスが低下しないようにしながら、働きやすい職場を目指してほしい」とした。

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